フエの香江(ヒョン川)を行き交うドラゴンボートが象徴するように、ベトナムは豊かな歴史と文化を持ちながら、急速な経済成長を続けている国です。東南アジアの中でも生活コストの安さと活気ある都市環境のバランスが取れており、近年は長期滞在・移住先として注目が高まっています。
この記事では、投資家・資産運用者の視点でベトナム移住のメリット・注意点を整理しました。
ベトナムの税制:非居住者と居住者の違い
居住者の定義
ベトナムでは、以下のいずれかに該当する場合に税務上の居住者とみなされます。
- 暦年で183日以上ベトナムに滞在する
- ベトナムに恒久的な居住地を有する
個人所得税(PIT)
| 所得区分 | 税率 |
|---|---|
| 居住者(累進課税) | 5〜35% |
| 非居住者(一律) | 20% |
居住者の場合は累進課税が適用されますが、海外源泉所得については「ベトナム国内で受け取った」とみなされる場合のみ課税される運用が一般的です。
キャピタルゲイン税
- 株式譲渡益:譲渡価額の0.1%(取引ごと)
- 不動産譲渡益:譲渡価額の2%または利益の25%のいずれか低い方
株式に関しては利益に関わらず売却額の0.1%という固定率なのが特徴。含み益ゼロでも課税されることに注意が必要です。
注意点:日越租税条約
日本とベトナムは租税条約を締結しています。配当・利子・使用料などの取り扱いについては条約が優先されるため、二重課税のリスクは限定的です。ただし、日本の非居住者認定を受けた上で慎重に税務設計をする必要があります。
生活費の実態(2026年版)
ホーチミン市(サイゴン)
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 家賃(1LDK・中心部) | 4〜9万円 |
| 食費(外食中心) | 3〜5万円 |
| 交通費 | 0.5〜1万円 |
| 通信費 | 0.3〜0.5万円 |
| 合計目安 | 月8〜16万円 |
ダナン
ホーチミン・ハノイに比べてさらに物価が安く、ビーチまで近いロケーション。デジタルノマドやリタイアメント移住者に人気が高まっており、月6〜12万円程度での生活が現実的です。
ハノイ
首都として政治・行政の中枢。歴史的な街並みが残り、ホーチミンより落ち着いた雰囲気。外国人向けの住環境も整っており、月7〜14万円程度が目安です。
ビザ・在留資格
電子ビザ(e-Visa)
- 滞在期間:最長90日(2023年改正以降)
- 複数回入国可能
- 日本国籍は対象
- 取得費用:約25USD
観光・短期滞在目的であれば最も手軽な選択肢です。ただし就労・長期滞在には不向き。
一時滞在許可(Temporary Residence Card / TRC)
- 有効期間:1〜3年(種別による)
- 取得には**就労ビザ(DN)や投資家ビザ(ĐT)**等の資格が前提
- 年金受給者向けの退職者ビザは現時点では制度なし
投資家ビザ(ĐT)
ベトナムに対して一定額以上の投資(企業設立・不動産購入等)を行うことで取得できるビザ。長期滞在・就労の道が開けますが、現地法人設立など手続きの複雑さがあります。
ベトナムには現状、マレーシアのMM2Hのような「純粋な長期滞在型退職者ビザ」が存在しないことは注意が必要です。
海外証券口座との相性
ベトナムから**Interactive Brokers(IBKR)**やその他海外証券口座を利用することは技術的には可能ですが、以下の点に留意が必要です。
- IBKRはベトナム居住者向けサービスを制限しているケースがある(口座開設時の住所要件)
- 口座を日本在住時に開設しておき、その後ベトナムに移住するという流れが現実的
- ベトナムの外国為替規制により、大口の送金には手続きが必要な場合あり
結論
移住前に日本またはマレーシア経由でIBKRを開設しておくことを推奨します。ベトナムに移住してからの新規開設はハードルが上がります。
ベトナム移住のメリット・デメリット
メリット
- 生活費が安い:月8〜15万円で快適な生活が可能
- 成長市場:GDP成長率6〜7%台が続く活気ある経済
- 食文化が豊か:フォー、バインミー、ブンボーフエなど世界トップクラス
- 気候の多様性:南部は常夏、中部は温暖、北部は四季あり
- 日本人コミュニティ:ホーチミン・ハノイに多数
デメリット・注意点
- 長期ビザが取りにくい:退職者ビザ不在、就労・投資ビザが現実的
- インターネット規制:一部サービスはVPN必須
- 銀行口座開設:外国人は制限あり(就労許可証などが必要)
- 医療水準:大都市の国際病院は充実しているが地方は限定的
- 不動産購入:外国人は区分所有マンションのみ購入可(50年リース)
こんな人にベトナムが向いている
- デジタルノマド・フリーランスとして活動しており、東南アジアで低コストに生活したい
- タイやマレーシアより「新鮮な場所」を求めている
- 食と文化に興味があり、旅行感覚で生活を楽しみたい
- 長期ビザを投資家ビザや就労ビザで解決できる人
まとめ
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 税制有利度 | △(キャピタルゲインが微妙) |
| 生活コスト | ◎ |
| ビザ取得のしやすさ | △(長期は要工夫) |
| 英語環境 | ○(観光地・IT系は通じる) |
| 投資口座との相性 | △(移住前に開設推奨) |
| 食・文化 | ◎ |
ベトナムは「純粋な節税目的の移住先」としては他のASEAN諸国に劣る面もありますが、生活コスト・文化・食・成長感のトータルバランスは東南アジアでも随一。特にデジタルノマドやリモートワーカーには非常に魅力的な選択肢です。
長期ビザの課題さえクリアできれば、資産運用と豊かな生活を両立できる環境が整っています。
当記事は情報提供目的です。税制・ビザ要件は変更される場合があります。必ず最新の公式情報および専門家にご確認ください。

